VOYAGER

旅と絵の物語

はい、次の詩   千曲川旅情の歌

これは小学校六年生の時に

友だちと一緒に暗記した、島崎藤村の詩です。

なぜこの詩を覚えようとしたのか、それは忘れました。彼女の提案だったかもしれません。

あのころから、もうわたし(たち)は旅の詩に心を揺らしていたんですね・・・

もうだいぶ忘れてますが、あのころはすぐに暗唱できたんです。こどもはすごい。

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    千曲川旅情の歌      島 崎  藤 村

   一

小諸なる古城のほとり 

雲白く遊子(いうし)悲しむ

緑なす繁蔞(はこべ)は萌えず

若草も藉くによしなし

しろがねの衾(ふすま)の岡邊

日に溶けて淡雪流る

あたゝかき光はあれど

野に滿つる香(かをり)も知らず

淺くのみ春は霞みて

麥の色わづかに靑し

旅人の群はいくつか

畠中の道を急ぎぬ

暮れ行けば淺間も見えず

歌哀し佐久の草笛

千曲川いざよふ波の

岸近き宿にのぼりつ

濁り酒濁れる飲みて

草枕しばし慰む 

   二(正確にはこちらが千曲川旅情の歌)

昨日またかくてありけり

今日もまたかくてありなむ

この命なにを齷齪(あくせく)

明日をのみ思ひわづらふ

いくたびか榮枯の夢の

消え殘る谷に下りて

河波のいざよふ見れば

砂まじり水巻き歸る

嗚呼古城なにをか語り

岸の波なにをか答ふ

過(いに)し世を靜かに思へ

百年(もゝとせ)もきのふのごとし

千曲川柳霞みて

春淺く水流れたり

たゞひとり岩をめぐりて

この岸に愁(うれひ)を繋(つな)ぐ

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これも、とにかく、旅は、ひとりなんですねー・・・